Saturday, January 31, 2015

ニューヨークの大学院で「英語がひどい」と言われました。第6回


母語と同じレベルで発言したいです



KEC Emi:    メキシコ人の上司の方の話に戻りますけれど、Michiyo さんが一番気になっている「心理的な部分」に関して、上手に言えないところがあっても英語を堂々と話す彼女の強みって何でしょうか。

Michiyo:     彼女の強み…、笑 そうですね。うーん…、まあ、おそらく英語圏の生活ももう長いと思うので、毎日英語で生活していて、英語でコミュニケーションとらなきゃいけない状況にずっとあったと思うので、たぶんその心理的なものっていうのは、彼女からは特には感じられないですね。

KEC Emi:    うーん。

Michiyo:     英語が下手だからとかって、おそらく全然思ってないだろうし。笑

KEC Emi:    笑 なるほど。じゃあMichiyo さんが持っていらっしゃる心理的な障壁みたいなものを、上司の方は持ってなさそうだ、っていうことですか?

Michiyo:     持ってないと思います。はい。

KEC Emi:    どうでしょうね。でも、じゃあ、それは、「彼女のような心理的状態で英語を話せるようになりたい」というふうに考えることもできますか?

Michiyo:     そうですねー…、その、日本語と、母語と同じレベルで、何か考えたときに発言できるようになりたいと思うんですけれども、やっぱりそれには、リスニングも自信がないので。

KEC Emi:    はい。

Michiyo:     リスニングで、「本当に今これが話されてるのか?」っていうのも、ちょっと自信がなかったりとかするので、そうすると、結局全部。笑 もちろん話すっていうのもそうだし、やっぱりもうちょっと聞き取れないと、話にキャッチアップできてない感じがあって、いま話そうとしていることが本当にその周りが話していることなのかっていうことも、若干自信がなかったりとかするので、リスニングの能力も上げつつ、っていうのが一緒にセットなんですけど。そういう全般的な能力を上げつつだったら、少し心理的な面も下がってくるとは思います。




KEC Emi:    相互作用ですね。「一歩引いてしまう」、それと、「あ、いま私引いちゃった」と思うと、ますます出て行けなくなってしまう。

Michiyo:     はい。

KEC Emi:    他に何かありますか?

Michiyo:     うーん、もうそんな感じかなと思います。はい。

KEC Emi:    ではリスニングなり、ライティングなり、いろんな要素はありつつも、全部がつながっている部分はやっぱりその「一歩、思い切って出られない」っていうところなんでしょうかね。

Michiyo:     はい、そうですね。そこが、個人的にはすごく気になっているところですね。

KEC Emi:    わかりました。では、いま伺っていた中で、私が考えたことをお話ししても大丈夫ですか?

Michiyo:     はい、大丈夫です。


日本語の力と、英語の力



KEC Emi:    ここまで、すべて日本語でやり取りをさせていただいている中で、Michiyo さんは日本語の力が高いなと感じました。

Michiyo:     日本語の力ですか?

KEC Emi:    はい。ボキャブラリーも豊富ですし、同じことを繰り返しお話しされる場合にも、言葉を変えてこられるので、表現も豊かだと思います。それから、お話のされ方が、やや速い。早口で、言葉数が割と多いタイプの方だと思いました。

Michiyo:     うーん。

KEC Emi:    なので、描写する場合はすごく細かく丁寧になるんですけれども、一方で、もう少しまとめて端的に話すと、もっと言葉を少なくできる、という面もありそうです。

Michiyo:     はい。

KEC Emi:    この、「丁寧に話して、言葉の数が増える」というのは、裏返すと、「言葉の数を減らすと、丁寧さも減ってしまう」というようなお気持ちがあるんじゃないかなと思います。

Michiyo:     うんうん。

KEC Emi:    ご自身の中で、ぶっきらぼうというか、雑な感じにならないように気をつけているのかもしれないですね。まとめると、日本語に関しては、「表現が豊かで、言葉が多くて、説明が丁寧」という特徴をお持ちかなという印象を受けました。

Michiyo:     はい。

KEC Emi:    それで、こういった特徴をお持ちの方が、あまり得意でない第二言語をやろうと思ったときに、いきなり日本語と同じレベルにしようっていうのは、ちょっと苦しいと思うんですね。

Michiyo:     はい。

KEC Emi:    「日本語だったら」ということが何度か出てきましたが、英語を使うときには、どうしても日本語より表現が乏しく、言葉数が少なく、速度も遅くなるわけです。それは当たり前ですが、そこに、「母語と同じように英語を使いたい」というようなことを望まれると、「日本語だったらこんなに高いレベルで話せるのに、英語はそれにちっとも追いつかない」となります。Michiyo さんの場合は日本語力と英語力の差が大きい分、不満が大きいんじゃないかなと思いました。

Michiyo:     あぁ。

KEC Emi:    それに関連して、日本語で考えて、それを英語に訳すというのは、私は個人的に別にいいと思っています。それ自体は邪魔に感じる必要はないです。

Michiyo:     はい。

KEC Emi:    たまたま「最近、徐々に英語で考えるようにしていて、そのために英語がスムーズに出ている」というお話がありましたが、そういう気がするなら、それは続けていかれればいいと思います。

Michiyo:     はい。

KEC Emi:    そういう改善をご自分でされているのは、素晴らしいです。

Michiyo:     はい。

KEC Emi:    でも、またいつか、日本語で考えるようになるかもしれません。そうなったとしても、それもそれでいいと思います。


(まだ、つづきます)


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