もう少し、気を楽にしていきましょう。
KEC Emi: 先ほど、「話す、聞く、書く、読む」の順番で苦手だっていうお話がありましたけど、前の2つ、「話す、聞く」が音に関すること、後ろの、比較的得意だというのが「書く、読む」で文字に関することですね。
N.T.: はい。
KEC Emi: その中でも「聞く」よりは「話す」、「読む」よりは「書く」が苦手で出てきています。受信する側と発信する側とで分けると、音声でも文字でも、どちらも発信する方が苦手だということになりますね。
N.T.: あぁ、はい。
KEC Emi: これにはいろんな要素があると思うんですけど、たとえば日本語の場合も、ご自身で「聞く」「読む」より「話す」「書く」が苦手だなというような感覚がありますか?
N.T.: あの、どうなんだろう…。いや、割と話すのも書くのも、得意というか、そういう感じです。書くのであんまり困ったことはないです。
KEC Emi: なるほど。そうですね、今こうやって何十分かお話をしていても、私はN.T.さんがお話が苦手だとは感じていないです。
N.T.: はい。笑
KEC Emi: 日本語で話したり書いたりが得意な方ほど、「日本語だったらもっとできるのに、英語になるとできなくなっちゃう!」って、自分に厳しいダメ出しをしてしまうことがあるんですよ。
N.T.: あー、なるほど。
KEC Emi: 母語と同じように使えないのは当たり前です。特に日本に住んでいれば日本語ですべてまかなえてしまうので、日本語と英語の経験の差は圧倒的です。それなのに、日本語と同じレベルの英語を自分に求めるというのは、ちょっと厳しすぎると思いませんか?
N.T.: あぁ、はい。そうですね。
KEC Emi: なので、「できない、できてない」と思うよりは、「経験が少ない割にできてる!」というようなところをなるべく見つけてあげるように意識を変えることができたら、英語に対して気が楽になるんじゃないかなと思います。
N.T.: あー。
N.T.: そうですね。英語を話すとき、最初に日本語が頭の中に出てきて、これ英語でどうやって言うんだろう、それがうまく話せないって思ったことは結構あります。
KEC Emi: そうですね、それはもう本当にごくごく当たり前のことです。日本人ですし、その研究室以外では、ずっと日本語を使っているんですから。研究室の中でも、日本人同士は日本語で話しているということでしたよね。その環境の中で、留学生がいる場で英語に切り替えるということに慣れてくれば、だんだんできるようになると思います。ただ、今はまだ研究室の正式なメンバーでもないし、切り替えることにも慣れていない。それだけでも大変なのに、そのうえ、「自分は英語を話すのが苦手なんだ」とか、「また言えなかった」とかやってしまうと、どんどん緊張やプレッシャーが強くなって、自分で自分を言えない状態に追い込んでしまう、というところがあるかもしれません。
N.T.: わかります。
KEC Emi: もう少し気を楽にしていいと思います。「頭の中に、最初に日本語が浮かんでそれを英語に訳す」とのことですが、これも、英語教育の中には「それは良くない」という方もいますが、私はいいと思います。だって、「あぁ、また日本語が浮かんじゃった。英語で浮かべなきゃいけなかったのに」と思うと、それはかえってマイナスなので。
N.T.: あぁ、なるほど。
KEC Emi: 私は構わないと思います。英語で浮かんでくるようになったらそれでいいし、日本語で浮かんできてそれを訳すんだったら、それでもいいと思います。ただ注意してほしいのは、N.T.さんのように日本語の力が高い方は、浮かぶ日本語が高度であることが多いという点です。それをそのまんま英訳しようすると、レベルの高い英語が必要になってくるので、それは咄嗟には難しいかもしれないです。
N.T.: あぁ。
KEC Emi: これも、後々、専門用語を習得して自分の中に定着したら追いついてくると思いますけど、今の段階で、他の人の話を聞いてもまだちょっとふんわりしてる、たまに辞書も引く、みたいな状態で、頭に浮かんだ高度な日本語をそのまま英語訳しようとすれば、時間がかかるのは当たり前です。
N.T.: はぁ、そうですね。
日本語のコントロールと、「書く」練習を。
KEC Emi: これを何とかする方法としては、2つ。1つめは、速く英訳できるように、最初に浮かんだ日本語を単純な日本語に変えて、整えてあげる。
N.T.: あぁ。
KEC Emi: N.T.さんのように日本語力が高い方なら、そのコントロールができると思います。英訳しやすい日本語にしてから訳す、それを話す、あるいは書く、ということです。
N.T.: はい。
KEC Emi: もう1つは日本語のレベルを保って、そのまま英訳する。その代わり、訳す間のタイムラグがあったり、「あぁ、すぐ言えなかった」というのがあっても、それは当たり前だというふうに考えること。
N.T.: はい。
KEC Emi: 特にこの方法は「書く」で練習するといいと思います。書くときって、相手を待たせてるという感覚がないので。
N.T.: 笑 そうですね。
KEC Emi: ゆっくり練り上げて、さらに書き直しもできるので、日本語で浮かんできたものを、なるべくそのレベルを保って、ニュアンスも含めて英語にできるようにっていうことを積み重ねていくといいと思います。そして、「書く」ことは「話す」の準備にもなります。書いた経験のある内容を話すときが来たら、それはたぶん話せるようになってますよ。
N.T.: はい。
KEC Emi: そうやっていると、だんだん「話す」のレベルも上がっていきます。
N.T.: なるほど。
KEC Emi: とりあえず今の段階では、話すときにはあまり高度にしないこと。一方、書くときには、レベルを上げる練習という意識をもって、辞書もしっかり使って、書く。読んでいらっしゃるものも論文なので、そのくらいの高いレベルで書けるように。メールだとどうしてもそんなに高度な内容は書かないと思うので。
N.T.: はい、そうですね。笑
KEC Emi: 笑 メールとは別に、たとえば読んだもののサマリーを書くとか。
N.T.: なるほど。
KEC Emi: その練習で、高度な内容を英語で発信するというのを「書く」ことを通してやっていくと、「話す」になったときにも、発信するという意味では同じですから、徐々に専門家として適切な話し方に変わっていくと思います。
N.T.: あぁ、ありがとうございます。
KEC Emi: 今までのところでご質問とか、何かモヤモヤしたこととか、ありませんか?
N.T.: うーんと…、大丈夫です。
KEC Emi: ではもう1つの、日常会話という面では、返すときに1語2語の単語になってしまうのが気になる、ということでしたね。先ほど、受験勉強のお話をうかがったときに「構文を分解したりして…」というのが出てきましたが、きっと文法はすごくよくわかっていらっしゃいますね。日本の受験では文法をしっかりやらされますから、それは高校までで完成しているという感じですよね。
N.T.: はい。
KEC Emi: で、にもかかわらず、話すときになると、文法どころじゃなくなっちゃう、ってことですよね。
N.T.: 笑 はい。
(もうちょっと、つづきます)
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