Monday, May 11, 2015

留学して3年…こんなはずじゃなかった。第6回


実際に脳で起きていることなんです



KEC Emi:   はい。まずは「苦手」について。お話の中で、「苦手意識が強い」とか、「最初に『あ、苦手だ』と思うとオフになっちゃう」とかっていう表現がありましたけれど、これはもうすごく的を射てると思います。実は私がやっている英語コーチングというのは、脳科学を利用しているんですが、kjさんがおっしゃった、「オフになる」という感覚、それは実際に脳で起きていることなんですね。

kj:            ふーん。

KEC Emi:   「苦手」などネガティブな感情をもった瞬間に、脳は深く考えたり柔軟に対応したりという高度な作業ができにくい状態になってしまうんです。

kj:            はー。

KEC Emi:   たとえば恐怖を感じた場合、人間というのは生命を守ることがいちばん大事ですので、高度な考えなんかしていられないってなりますよね。それが「オフ」の状態です。そうしないともっと危険なことが起きたとき命を守れなくなってしまうので。つまり逆に言うと、高度な作業をしようと思ったら、「命の保証はされている、ここは安全な環境だ、相手は敵じゃないんだ」っていう状態にしてあげないと、脳が働いてくれないっていうことになるんです。

kj:            うーん、なるほど。

KEC Emi:   気を楽にして、相手に対して、「この人は大丈夫なんだ」って思うことで、高度な作業、この、前頭葉なんですけど、このあたりの働きが高まります。英語教育では学習者の感情が大事だと昔から言われていたのですが、最近は実際に脳科学の分野でもそれが発見されつつあります。なので、そのあたり、少し意識を変えていかれるといいかなと思います。要は「苦手を感じないようにしましょう」っていうことなんですけれど、これは言うは易し行うは難しで、なかなか難しいですよね。

kj:            はい。


「ネイティブ」と「ノンネイティブ」。



KEC Emi:   ひとつ、お話の中に出てきたヒントとして、「ノンネイティブだと気が楽だ」っていうのがありましたよね。ここ、すごく大事だと思うんです。英語であることに変わりはないですし、まして、ESLの先生のように、ノンネイティブといえどもかなり高度な英語を話す人がいるわけです。もちろん彼らの英語にも“リエゾン”が使われている、発音には「シュワ」も入っている、アメリカ英語特有の母音も表現も出てくる。そういう中にあっても、kjさん自身が「この人はノンネイティブだから気が楽だ」と思ってさえいれば、聞こえてくるってことですよね。

kj:            うーん、なるほど。

KEC Emi:   なので、たとえば「ネイティブ」「ノンネイティブ」っていう区別をしないようにするとか、あるいはネイティブに対して、ノンネイティブの上手な人と対応しているようなイメージを持つとか。気持ちを少し切り替えるだけで、ひょっとすると聞こえてくる量が増えるかもしれないです。

kj:            うーーん。なるほどー。ありがとうございます。それは素晴らしいですね。あーなるほど。

KEC Emi:   笑 それに関連して、たとえば学習者の中には、「同じ相手でも真面目に話してるときは聞き取りにくいんだけど、ちょっとお酒が入ると聞き取りやすい」っていう方がいらっしゃいます。そういうご経験はありますか?


kj:            それ、わかるかもしれないですね。なんかホームパーティーとか呼んでくれて、ちょっとお酒入ってきてからの方が、なんか不思議と…酔って頭の働きは鈍くなってるような気がするけど、わかるかもとかいう…。確かにあるかもしれないですね。

KEC Emi:   そこには先ほどの「気が楽になる」っていう面もあると思うんですが、もうつ、分析が甘くなって良い効果が出るというのもありそうです。kjさんは文法や音声やボキャブラリーの知識をものすごくお持ちなので、

kj:            いやいや。

KEC Emi:   いえ、それはもう絶対そうなんですよ。アメリカの大学院で、博士課程で、文学の研究をしていらっしゃるんですから、文法や語彙が弱いはずないんです。文法が弱かったら読み書きはできません。ご謙遜は別にして、私も専門家ですから、kjさんに英語の知識があるのは間違いないと思います。ただ、そのために、放っておくと分析が始まってしまうんですね。

kj:            うーん。

KEC Emi:   文法的な分析、音声的な分析、単語レベルの分析。たとえばお酒が入ったりすると、その細かく分析しよう、深く深く見ていこうっていうことがちょっと緩んで、広く、ま、耳が開くみたいな感覚ですけど、そういう感じで、ふわっと聞こえてくることが増えるかもしれないです。

kj:            なるほどー。

KEC Emi:   お酒でなくても、ご自分に合ったリラックスの方法を見つけていただければいいんですけど、その感覚をもってリスニングに臨むといいんじゃないかと思います。いかがでしょう?

kj:            本当そうですねー。…そうですね。なんか「木を見て森を見ず」じゃないですけど、細かいところばっかり見ちゃって大意をとることができてないってところがありますね。 


(つづきます)

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